北越屋が営業停止処分を食った。 理由はいわゆる、未成年との淫行である。 店の在所は浅草北部、新吉原の京町一丁目のあたり。なにを取り扱う店か、もうこれだけで凡そ察しがつくだろう。 想像通りだ。男どもが持て余す、日々の精気の発散場。血の滾りを抑えかねたる野郎どもを客として、紅燈緑酒の綺羅を張り桃色遊戯の悦楽(たのしみ)を提供するを事とする、典型的な遊廓である。 ――その北越屋に、柴田赤太郎なる男子が客として登楼(あが)り込んだのは、明治十七年七月十五日であった。 (Wikipediaより、新吉原仲の街) 赤太郎はひとばん遊び、翌十六日に帰っていった。 現象としてはそれだけである。相手役の遊女(おん…