昭和の終わりごろ、経済学専攻のS先生と知り合い、親しくさせていただいたことがある。 俊英の若手研究者で、将来を嘱望されていたひとである。 ある日、家で本を読んでいると、母親が階下から大声で、 「よしあき!たいへんだよ」という。 何事かと降りてゆくと、大きな段ボールにタケノコが丁寧に包装されて送られてきたのである。 これが、京都の有名なタケノコの朝堀りで、きわめて希少高価なものであり、わが家なんぞでは、めったに手に入らない代物である。 宛名をみると、まさに俊英S先生からのプレゼントである。 母親はむじゃきに喜んでいる。 さぁ、どうして食べようか? 料理はああして、こうして、姉や兄のところにもおす…