口さけ女はいなかった。恐怖の大王は来なかった。噂はぜんぶデマだった。一方で大災害が町を破壊し、疫病が流行し、今も戦争が起き続けている。何でもいいから何かを信じないと、何が起きるかわからない今日をやり過ごすことが出来ない……。飛馬と不三子、縁もゆかりもなかった二人の昭和平成コロナ禍を描き、「信じる」ことの意味を問いかける傑作長篇。 ある個人の目から見た生活史のような小説だった。昭和~平成が中心なので、起こる出来事すべてに私自身の当事者意識がありリアリティがあり、自分がこの身で知っている歴史を俯瞰する読書体験だった。それにしてもこの世界、私たちが今生きている世界というのは、小説の形で改めて外から見…