◎古貨幣迷宮事件簿 「稗三合一揆と八戸藩札」─見る者の見方で見え方が変わる─ 天保期から明治中期までの北奥の話を書いているが、「物事の見え方は、見る者の境遇や見る時の立ち位置で変わる」と思うことが多々ある。 その一例が、八戸藩の野村軍記という家老が行った改革の評価だ。 野村軍記は当初、五十石取りの下士だった。八戸藩は軍記を主法専務に登用して,文政2(1819)年から藩政改革に乗り出した。軍記の主な取り組みは、「江戸藩邸の経費節減」、「綱紀粛正」、「新田開発」、「特産品の移出」、「藩専売制の実施による商業資本の統制」など多岐にわたる。文政6年には大野鉄山を藩営とし、実際の運用を西町屋に任せて利益…