1973年4月13日、アメリカ・シカゴで一人の老人が息を引き取った。彼の名前はヘンリー・ジョセフ・ダーガー・ジュニア(Henry Joseph Darger, Jr.)。享年81歳。 生前の彼は全く目立たない老人だったという。病院の掃除夫を長年務め、生涯独身のままだった。 何よりもダーガーの生活は貧しく、近隣の住民からはゴミ捨て場を漁る姿を何度も目撃された事から浮浪者だと思われていた。 そんな彼の死後、住んでいたアパートの一室の整理を始めた大家のネイサン・ライナーは、トラック2台分にも及ぶ「ごみ(遺品)」を処理した。――ただ、大家のライナーは孤独な老人(ダーガー)の持ち物の中から一つの旅行鞄を…