ここに住み始めたばかりの頃、ドイツと日本との違いが新鮮で、物珍しくてとにかく日々、楽しくして仕方がなかった。 まるで小さな子供が新しいことを日々学んでいくように、私はドイツという国を、そしてその文化や習慣を貧欲なほどに吸収してきたように思う。 今はもうドイツの暮らし方が私にとっては普通になっているのだけれど、でも年々日本のあの入浴の習慣が懐かしくてたまらなくなっているのだ。 私が6歳まで住んでいた家にはお風呂がなかった。 当時はそんなのは普通で、街にはたくさんの銭湯があったからなんの問題もなかった。夕方になると石鹸やシャンプーを入れた小さな桶と風呂敷に包んだ着替えやタオルを片手に人々が行き交う…