平安時代末期に成ったこの説話集は,おそらく大寺の無名の書記僧が,こんなおもしろい話がある,ほかの人に知らせてあげたい,おもしろいでしょうといった気持ちで集め書かれたと言われている.本書は,大部の説話集の中から本朝の部のみをとり上げ,さらに訳者福永武彦の眼により155篇を選んだ.文学的香り高い口語訳により,当時の庶民の暮らしぶりを生き生きと再現している――. 漢文訓読調に和文脈をまじえた文体で「天竺(インド)」「震旦(中国)」「本朝(日本)」の三部に分けて収めた,日本最大の古説話集1,000余.撰者,成立年等について,序跋や奥書もなく,現在も未詳のままである.原拠は『釈迦譜』『日本霊異記』『三宝…