本論の趣旨 呉市は、海軍が培った技術を用いるという連続性と軍・軍需目的とは異なるという断絶性の両面性を保有している。この矛盾を解消させる手段が平和産業港湾都市であり、戦前との連続性・断絶性どちらを主張する時にも使用できる便利な概念であった。 平和産業港湾都市という概念は、大和ミュージアムの展示においても連続性と断絶性の矛盾を解消する役割として機能する。 平和産業港湾都市の「平和」は便利な看板であり、軍需から「転換」するという名目で、海軍・海軍工廠で培われた技術・産業に依存した都市復興・都市計画を行った呉市は、都市再建の初期条件としては戦前・戦後の連続性があった。 【menu】 前提 1 平和産…
本稿の趣旨 敗戦後の呉市は海軍依存からの転換を目指し企業誘致と産業育成に努め成功したが、冷戦により再軍備への忌避感が無くなると軍港都市のプライドを取り戻した。しかしそれは再び海軍に依存していく契機となり、失われた30年により製造業が衰退すると呉市は観光資源として海軍遺構に依存を深めている。 【menu】 はじめに 第1節 旧海軍関連施設の産業活用について 第2節 国への働きかけ 第3節 特別立法の実現に向けて 第4節 GHQへの諒解工作 第5節 「旧軍港都市転換法」の制定 おわりに はじめに 軍港都市呉の形成 呉市は軍港都市としての機能を備えるべく、都市整備や経済活動を市民が自発的に行うことに…