国文学者、名古屋学院大学教授。1948年11月25日名古屋生まれ。1971年愛知県立大学卒、74年名古屋大学大学院国文科修士課程修了。1974年愛知県立一宮高校教諭、1977年愛知県立鳴海高校教諭、1980年名古屋学院大学経済学部講師、83年助教授、89年教授。1985年『四部合戦状本平家物語全釈』で日本古典文学会賞受賞。
tougoku-kenki.hatenablog.com 前回は壇ノ浦合戦の基本史料から「『平家物語』以外に水手への攻撃を記す史料は無い」という情報の真偽についての確認を行い、実際その記述がなかったことを確かめました。今回はその水夫への攻撃が唯一記されているという『平家物語』諸本から見ていきます。検証だけでなく、壇ノ浦合戦に関する各本ごとのばらつきや内容の多彩さを見て『平家』諸本比較の面白さを知っていただければ幸いです。 まず『平家物語』及び異本の成立の概略は以下をご参照ください。 平家物語(読み)へいけものがたり日本大百科全書(ニッポニカ)「平家物語」の解説 kotobank.jp・平清盛(…
tougoku-kenki.hatenablog.com 前回お話したように壇ノ浦合戦の源氏方による水夫への攻撃は、 ■『延慶本平家物語全注釈 第六本』(※1)・水夫への攻撃は『平家物語』諸本のみに見えるが ■『四部合戦状本平家物語全釈 巻十一』(※2)・『平家物語』以外に水手への攻撃を記す史料は無い。 と『平家物語』以外には見られないことを研究者によって断言されておりますが、実際にそうであることを自分でも確認しておきたいので、今回は壇ノ浦合戦の研究に用いられる諸史料から見ていきたいと思います。 まず、その史料の選定ですが、以下のような参考文献で壇ノ浦合戦に関して活用されている、信用に足る文献…
日本史や歴史小説に興味のある方は、以下のように描かれる源義経のイメージや壇ノ浦合戦の展開を何がしかの形でご覧になったことがあるのではないでしょうか。 ■小説 司馬遼太郎・著 『義経』(※1) 1968年単行本刊行 該当回の雑誌掲載は『オール讀物』67年10月号 ・戦いの初動期において敵船の船頭や梶取に矢を集中してかれらを殺してしまえばどうか。かれらさえ殺せば敵船は進退をうしなう。進退をうしなったところでゆるゆると名ある者を狙撃する。卑怯だろうか。「どうであろう」 と、義経は水軍通の船所正利にきいた。正利はおどろいた。「それは水軍の作法ではありませぬ」 はげしくかぶりをふった。陸上の騎射戦におい…
早川厚一さんたち8人の共著「『源平盛衰記』全釈(17-巻6ー1)」(「名古屋学院大学論集人文・自然科学篇」58:2)を読みました。早川さんが中心になって、日本文学・日本史・日本語学・中国文学などの研究者がメールでやりとりしながら作業をしたそうです。慶長古活字版の本文、近衛本・蓬左文庫本・静嘉堂文庫本の校異、注解、引用研究文献を掲出、今回は巻6の冒頭「丹波少将被召捕」から「西光父子亡」の途中まで、三弥井書店刊の校注本でいえば第1冊のP189~200に当たります。 私は『源平盛衰記年表』(三弥井書店)と校注本『源平盛衰記(一)』(三弥井書店)を手許に置いて読んだのですが、史料では顕広王記と愚昧記が…