パタゴニアで羊を盗む アルゼンチン パタゴニア パタゴニアの大地には犯罪自由の風が吹く 無法の大地 パタゴニアは荒涼とした無法地帯である。秒速五〇メートルの風が吹きすさび大地には背の低い灌木しか生えない。手にしたアルゼンチン紙幣が風にさらわれ、あっという間に一〇〇メートル先まで吹き飛ばされたことがある。幸い紙幣は地面を覆いつくす黄色いコイロン草にひっかかった。 人はまばらで羊の群れが散見される。私が駐在していたボリビアと違い先住民も見かけることは少ない。白人の地なのだ。この地のインディオは一九世紀中後半にほぼ一掃され、土地はアルゼンチン人に分配されたが、不在地主となったものも多い。パタゴニアは…