バルザックの「人間喜劇」シリーズに描かれた主人公たちは、巨怪な性格の持ち主が多い。『従兄ポンス』の老友を気遣う末期の床にある音楽家シルバン・ポンス、『知られざる傑作』の天才画家フレンホーフェル、『ルイ・ランベール』の哲学者ルイ・ランベールなどである。 彼らの強烈な情念と行動は破格であるといっていい。それが小説を部類の面白さに仕立てている。 こうした人物像は「フランス革命」を生きた人々がモデルであるとされる。 激動期であり、かつ人間性の解放の時代は規格外れな大きな人間を輩出するものらしい。 それに相当するのが明治時代だろう。『らんまん』のモデル牧野富太郎もその一人だろうし、内村鑑三や森鴎外や露伴…