うす氷 解けぬる池の 鏡には 世にたぐひなき 影ぞ並べる これほど真実なことはない。 二人は世に珍しい麗質の夫婦である。 曇りなき 池の鏡に よろづ代を すむべき影ぞ しるく見えける と夫人は言った。 どの場合、何の言葉にもこの二人は長く変わらぬ愛を誓い合うのであった。 ちょうど元日が子《ね》の日にあたっていたのである。 千年の春を祝うのにふさわしい日である。 姫君のいる座敷のほうへ行ってみると、 童女や下仕えの女が前の山の小松を抜いて遊んでいた。 そうした若い女たちは新春の喜びに満ち足らったふうであった。 北の御殿からいろいろときれいな体裁に作られた菓子の髭籠《ひげかご》と、 料理の破子《わ…