人情世界 (1901) 1901年(明34)3月~10月 雑誌「人情世界」連載、日本館本部発行 華族令嬢愛子2 明治後期の読物雑誌「人情世界」(旬刊)に長期間にわたって連載された構想の大きい探偵活劇。地の文は美文調の文語体、会話は口語体という、言文一致体の定着直前の一般的な小説文体である。 長崎での葛籠入り殺人死体事件の犯人を追って、探偵有尾は追跡の旅費や手当が出ないために退職し、自腹で東京へ向かう。犯人は海野伴作という中老の男だが、年齢以上に身体は敏捷、頭脳も「奸智姦才に長けたる」手ごわさがある。一時は主要人物たる探偵が殺害されるかという事態に至る。 ヒロインの愛子は自身の過去に謎を持ちつつ…