●人形佐七の映画を観る。でもその前に、原作である「風流六歌仙」を先に読んで予習しておくことにする。春陽文庫なら第六巻『坊主斬り貞宗』に収録されている。内容をほとんど忘れていたのだが、これは意外なほどミステリ色の濃い秀作であった。江戸の芸能界を牛耳る、風流六歌仙と自称する六人が次々に殺されてゆくばかりか、それぞれの死体の上には彼らの似顔絵が置いてあるという派手な事件である。その絵は、パトロンであるお大尽がひとつの趣向として六羽の鳩に結びつけて飛ばしたはずなのだが。 動機の分からない連続殺人の謎に、犯人はどうやって絵を集めたのかという謎が加わってちょっとしたもの。盲点をついた犯人設定はチェスタトン…