昭和5年(1930)の銀座四丁目(尾張町)交差点 時間旅行SFの古典、広瀬正マイナス・ゼロはファンの多い夏への扉より周到に過去を取材している。 主人公は、1963年をゼロとして一気に昭和7年5月まで31年飛ぶ。主人公は着地点の世田谷区梅ヶ丘から銀座まで出かけるが、そこで当時の風俗が丹念に描かれる。主人公は173cmで63年当時で背の高いほうとされているが、昭和7年では外国人とまちがえられる。荷風も同身長だったから、銀座を歩けば目立ったことだろう。 このころまだ服部時計店や日劇は工事中で、銀座三越も2年前にできたばかりだ。マイナス・ゼロによれば行きかう人の半数ちかくが和服下駄履きで、その他を「圧…