近世になってから、平家物語の詞章に譜を付記した本が作られるようになりました。現在、平曲譜本と呼ばれています。元来、目の見えない琵琶法師は譜によって芸を伝承してきたわけではなく、耳から聴いて覚えてきたわけですが、正しい伝承の拠り所とするため、また趣味で平曲を語る晴眼者のために使われたとされています。勿論、西洋音楽のような五線譜ではなく、謡本に見るような記号・略語を本文に書き込むことによって語り方や間奏の琵琶の弾き方を示しています。 平家語りは八坂流・一方流の2流派があったとされ、八坂流は早く絶え、一方流は近世に前田流と波多野流に分かれて、後者は京都を根拠地としていたもののやはり早く絶えたとされて…