ここの家主は、土地を手放したようだ。囲まれた塀の向こうは、今まで窺うことはできず、ただ広いことだけは想像できた。塀が取り壊され、敷地内が露わになった。と同時に、その隣に建つ家屋も一緒に取り壊され、なお広い土地が更地になり、ここも同じ家主だったのかと驚いた。 塀の向こうから、道路の方に伸びた一本の桜の木は、春には道行く人々を楽しませてくれた。しかしその桜の木も伐採され、とても残念な気持ちになった。 昨年、夏休みのラジオ体操の案内をみたのは、この家の塀にかかっていた、町の掲示板だったことを思い出した。今は掲示板の代わりに、マンションの建築計画の看板が立てられている。そういえば、今年のラジオ体操は、…