瀬戸内海に臨む海辺の町で、猫たちに導かれるまま、心地よく物語に身を任せることができました。編集者になりたいと東京の大学に進み、なんとか小さな出版社に就職した主人公・天音(あまね)。ところが会社はあえなく倒産してしまいました。 同じころ、唯一の身内だった祖父が他界し、故郷の町の古書店が天音に遺されました。失意のうちに東京を去り、無人の古書店の前に立ち、木枠にガラスが嵌った引き戸の鍵を開けたとき。物語が動き出します。 書店で「海町、古書店ものがたり」(朝倉卓弥、ハーバーコリンズ・ジャパン)を手に取ったのは、装丁が何かを語りかけている気がしたからです。表紙カバー全体に描かれた尾道の風景と猫たち、そし…