🌸夕顔の亡骸を東山に移す【源氏物語 47 第4帖 夕顔13】 灯はほのかに瞬《またた》いて、 中央の室との仕切りの所に立てた屏風の上とか、 室の中の隅々《すみずみ》とか、 暗いところの見えるここへ、 後ろからひしひしと足音をさせて 何かが寄って来る気がしてならない、 惟光が早く来てくれればよいとばかり源氏は思った。 彼は泊まり歩く家を幾軒も持った男であったから、 使いはあちらこちらと尋ねまわっているうちに 夜がぼつぼつ明けてきた。 この間の長さは千夜にもあたるように源氏には思われたのである。 やっとはるかな所で鳴く鶏の声がしてきたのを聞いて、 ほっとした源氏は、 こんな危険な目にどうして自分は…