歎《なげ》きつつ 我が世はかくて 過ぐせとや 胸のあくべき 時ぞともなく 〜嘆きながら 一生をこのように過ごせというのでしょうか 夜が明けても 胸の思いの晴れる間もないのに。 【第10帖 賢木 さかき】 心から かたがた袖《そで》を 濡《ぬ》らすかな 明くと教ふる 声につけても 尚侍のこう言う様子はいかにもはかなそうであった。 歎《なげ》きつつ 我が世はかくて 過ぐせとや 胸のあくべき 時ぞともなく 落ち着いておられなくて源氏は別れて出た。 まだ朝に遠い暁月夜で、 霧が一面に降っている中を 簡単な狩衣《かりぎぬ》姿で歩いて行く源氏は美しかった。 この時に承香殿《じょうきょうでん》の女御《にょご…