年末から読んでいた島崎藤村(明治5年<1872年>~昭和18年<1943年>)の『夜明け前』をようやく読み終えた。藤村が昭和4年から昭和10年にかけて『中央公論』に発表し、昭和7年と昭和10年に出版した長編小説だ。これは、彼が完結させた最後の小説でもある(次の作品『東方の門』は未完結)。 木曾の庄屋をとおして明治維新を否定的にみた『夜明け前』 舞台は木曾。「木曽路はすべて山の中である」という、あまりにも有名になった一文ではじまる 作品は、木曾街道の馬籠宿の本陣(宿場を代表する公的宿所で、大名、公卿等の重要な通行客を泊めた)であった藤村の実家とそれを取り巻く人々をモデルにしている。主人公の青山半…