「蓬生」巻の初校を見ていてつくづく思ったのですが、私は、『源氏物語』の全ての巻の中で、この「蓬生」巻が一番好きですね。紫式部が一番楽しんで書いてると思えるから。 特に、前半の、末摘花の落魄困窮世離れぶりの描写が素晴らしいです。なにしろ、邸が荒れ果てすぎて盗人が寄り付かないというのですから、まるで落語です。 姫君の時代遅れ世離れぶりの事細かな描写も、徹底しているようです。つれづれを慰めるために見る物語は、 「古りにたる御厨子をあけて、『唐守』『藐姑射の刀自』『かぐや姫』」 とあります。あまり他で名前を見かけない『唐守』『藐姑射の刀自』は、散逸した物語なので、どんなものか現代の我々にはよくわからな…