年を経て待つしるしなきわが宿は 花のたよりに過ぎぬばかりか 源氏に対し返歌をする末摘花の姫君 (源氏の君に by 末摘花の姫君) 〜長年待っていた甲斐のなかったわたしの宿を あなたはただ藤の花を御覧になるついでに お立ち寄りになっただけなのですね 【第15帖 蓬生 よもぎう】 泊まって行くことも この家の様子と自身とが調和の取れないことを思って、 もっともらしく口実を作って源氏は帰ろうとした。 自身の植えた松ではないが、 昔に比べて高くなった木を見ても、 年月の長い隔たりが源氏に思われた。 そして源氏の自身の今日の身の上と 逆境にいたころとが思い比べられもした。 「藤波《ふじなみ》の打ち過ぎが…