内田百閒 (1955年4月20日刊行,大日本雄辯會講談社,東京, 261 pp.)寝読みはまだ続いている —— 1945年3月下旬以降は、米軍に陥落したばかりの硫黄島から襲来するB29やP51の編隊による本土空襲の記録ががぜん増えてくる。東京だけでなく日本各地が空襲被災していると百閒は記している。百閒ですら “生活者の日常” と “戦時下の非日常” がしだいに切り分けられなくなってくる。一方では、「急に頭の上で爆弾の落下音を聞いた。……土手の向うの四谷のつい近くから黒けむりが立ち騰った。實に恐ろしい物凄い景色であった。……何だか解らぬが、いろんな物が飛び散ってゐた様であって、人の腕や首もあった…