埴谷雄高(1909-1997)川西政明『評伝埴谷雄高』(河出書房新社、1997)より無断で切取らせていたたきました。 追悼文の名匠はと問われて、即座に思い浮ぶ数名の文人から、この人が漏れることはない。 追悼文の名篇が残るには、まず依頼されねば始まらない。他界されたアノ人に言葉を手向けるとなれば、そりゃあまず埴谷さんだろうと、編集者・出版人がたから思われねばならない。生前の故人と好ましい交流があり、故人の人となりと業績とを正しく評価でき、それらを魅力的に再現できる表現力において、信用されねばならない。 魅力的に再現するとは、故人の生涯の核心部分を、おゝかたの人より深く摑み、しかも表現されてみれば…