1925年(大14)春陽堂刊、綺堂読物集1、全12篇。 1939年(昭14)春陽堂刊、夕涼み江戸噺。 岡本綺堂には本業の戯曲作品と一連の半七捕物帳の外に奇談の聞き書きのような作品集がある。若い頃に半七を何冊か読みふけったあとは、転勤のためその奇談集のほうまでは手が伸ばせなかった。この「三浦老人」は半七の番外編のようで、今回ふとしたきっかけで再度読み始め、たちまちその語り口に魅了されてしまった。12篇の小話があるが、個々の話をつなぐ合い間に枠物語のように筆者と三浦老人との交友の経緯が語られるのが味わいを深めている。個々の小話にも作為を感じさせない自然な語り口を読み進めることができた。☆☆☆☆☆ …