歴史小説作家。大正14年(1925年)、東京に生まれる。 昭和24年(1949年)、文化学院文科を卒業。 昭和27年(1952年)より故吉川英治に師事。 昭和38年(1963年)『孤愁の岸』で第四十八回直木賞を受賞。 昭和53年(1978年)『滝沢馬琴』で第十二回吉川英治文学賞を受賞。 昭和61年(1986年)『穢土荘厳』で第二十五回女流文学賞を受賞。 平成7年(1995年)、文化功労者に顕彰される。 平成29年(2017年)5月31日、老衰で死去。享年91。
1996年11月にオリジナル文庫として出版された。それを今、読んだ。なぜオリジナルなのかと言えば、1990年2月に『利休 破調の悲劇』が出版されていて、それに「老い木の花」と「家康と茶屋四郎次郎」「『綺麗さび』への道」という小論が加えられて文庫本化されたことによる。さらに文庫本には、大正14年から平成8年(1996:著者71歳)までの年譜が付されている。 調べてみると、著者は2017年5月、91歳で逝去されていた。合掌。 「利休 破調の悲劇」は文庫本で実質80ページの作品であり、これだけでは文庫本化できないということから、発表媒体の異なる3つの小論が加えられたそうだ。「あとがき」に著者自身が触…
〈七月の大べら坊に暑さかな〉 秋立つというのに、江戸は暑かった。 ― 文化4年7月の盆を迎えてしまって、父の7回忌のために国へ戻る一茶。章の冒頭にこの一句は置かれている(『ひねくれ一茶』)。 「大暑」の文字さえ暑い日。風の通り道を求めて家のなかを移動するが、すだれ越しでも境内の砂利の照り返しは並ではない。奇怪な入道の口から、刷いたような涼やかな雲が吐き出されているのを見あげていた。 『華の碑文』(杉本苑子1964年刊)を読み終えた。『世阿弥最後の花』(藤沢周2021年)がきっかけとなって寂聴さんの『秘花』(2007年)、そして『華の碑文』へと導かれ、能の芸術論など撒き散らす素養さえないまま、た…
世阿弥(ぜあみ)に興味を持ち、本書を手に取りました。 華の碑文: 世阿弥元清 (中公文庫 A 97) 作者:杉本 苑子 中央公論新社 Amazon 世阿弥は、室町初期の能役者・能作者で、父である観阿弥(かんあみ)と共に能を大成した人です。 本名は観世(かんぜ)三郎元清(もときよ)で、幼少期は鬼夜叉、藤丸と呼ばれていました。名前がコロコロ変わるのは昔あるあるですね。40代以降に観世の世(ぜ)と阿弥陀仏がくっついて世阿弥陀仏と呼ばれるようになり、略して「世阿弥」となりました。ただ当時は「世阿」と略されていたようです。 本書はそんな世阿弥の生涯が、弟の観世四郎元仲(もとなか)の視点から描かれています…
犯罪を描いた物語の終わりは、大体こんな感じです。 犯人が最後に改心する 犯人が正義の味方に成敗される やむを得ない理由で悪事に手を染めた犯人に慈悲を与える 多くの場合、物語の終わりとともに悪者がいなくなるのが定番です。このような展開が、ウケが良いのでしょうね。でも、今昔物語では、悪者が最後まで悪者という話が多く、現代人の感覚からすると、そんな終わり方はありかと思ってしまいます。
ドラマ、小説、漫画などの作品の中で、何か揉め事が発生する時、その原因は、金か色恋沙汰ということが多いです。どちらも、視聴者や読者のウケが良いから、物語の中で使われるのでしょう。金や色恋沙汰をテーマにした物語は、日本では随分と古くからあり、平安時代の今昔物語でも、よく出てきます。
12世紀に書かれたわが国最古の説話集である今昔物語。「今は昔」で始まる有名な説話集で、1200編以上も収録されています。こんなに多くの説話が収録されているのですから、今昔物語の説話を参考にして作られた物語が多そうですね。今昔物語を一から読もうと思っても、古典だから読むのに苦労しますし、1200もの作品を読み終えるのには相当な時間がかかります。代表的な説話を現代語訳して読みやすくなった入門書があれば、より多くの人が今昔物語に親しむことができるでしょう。
杉本苑子さんが亡くなられたのを知った。91歳。『穢土荘厳』上・下巻(1986年)。蘇我氏の血を受け継いだ持統、光明、元明、元正ら女帝が築いてきた勢力に対して藤原氏が政権奪取に立ち上がり、最大の政敵・長屋王への襲撃から火蓋が切られる。華やかな天平文化の陰に、人間の業の深さ、迷妄の種の限りなさを見る。大仏開眼に至る、歴史のうねりが描き出されている。訃報を知り、思わず書棚から取り出しページを繰っていた。杉本苑子と言えばこの1冊。詳細な部分は忘れているが、歴史に名を知る多くの人物が登場する。30代に入っても、このあたりの時代を背景にした作品が好きだったことへの懐かしさがこみ上げた。作者の確かな歴史認識…