歴史小説作家。大正14年(1925年)、東京に生まれる。 昭和24年(1949年)、文化学院文科を卒業。 昭和27年(1952年)より故吉川英治に師事。 昭和38年(1963年)『孤愁の岸』で第四十八回直木賞を受賞。 昭和53年(1978年)『滝沢馬琴』で第十二回吉川英治文学賞を受賞。 昭和61年(1986年)『穢土荘厳』で第二十五回女流文学賞を受賞。 平成7年(1995年)、文化功労者に顕彰される。 平成29年(2017年)5月31日、老衰で死去。享年91。
世阿弥(ぜあみ)に興味を持ち、本書を手に取りました。 華の碑文: 世阿弥元清 (中公文庫 A 97) 作者:杉本 苑子 中央公論新社 Amazon 世阿弥は、室町初期の能役者・能作者で、父である観阿弥(かんあみ)と共に能を大成した人です。 本名は観世(かんぜ)三郎元清(もときよ)で、幼少期は鬼夜叉、藤丸と呼ばれていました。名前がコロコロ変わるのは昔あるあるですね。40代以降に観世の世(ぜ)と阿弥陀仏がくっついて世阿弥陀仏と呼ばれるようになり、略して「世阿弥」となりました。ただ当時は「世阿」と略されていたようです。 本書はそんな世阿弥の生涯が、弟の観世四郎元仲(もとなか)の視点から描かれています…
犯罪を描いた物語の終わりは、大体こんな感じです。 犯人が最後に改心する 犯人が正義の味方に成敗される やむを得ない理由で悪事に手を染めた犯人に慈悲を与える 多くの場合、物語の終わりとともに悪者がいなくなるのが定番です。このような展開が、ウケが良いのでしょうね。でも、今昔物語では、悪者が最後まで悪者という話が多く、現代人の感覚からすると、そんな終わり方はありかと思ってしまいます。
ドラマ、小説、漫画などの作品の中で、何か揉め事が発生する時、その原因は、金か色恋沙汰ということが多いです。どちらも、視聴者や読者のウケが良いから、物語の中で使われるのでしょう。金や色恋沙汰をテーマにした物語は、日本では随分と古くからあり、平安時代の今昔物語でも、よく出てきます。
12世紀に書かれたわが国最古の説話集である今昔物語。「今は昔」で始まる有名な説話集で、1200編以上も収録されています。こんなに多くの説話が収録されているのですから、今昔物語の説話を参考にして作られた物語が多そうですね。今昔物語を一から読もうと思っても、古典だから読むのに苦労しますし、1200もの作品を読み終えるのには相当な時間がかかります。代表的な説話を現代語訳して読みやすくなった入門書があれば、より多くの人が今昔物語に親しむことができるでしょう。
華の碑文 世阿弥元清 (中公文庫 す3-34) [ 杉本苑子 ]価格: 1430 円楽天で詳細を見る 【あらすじ】 室町時代の初頭、まだ南北の朝廷が競い合い、戦乱が収まらないころ。「能」は存在せず、猿楽一座の座頭、結崎清次(後の観阿弥)は、大和興福寺の神事に携わることで僅かな禄米を貰い、一座の生活を営んでいた。普段は地方に巡業して、地元では僧兵たちから、奴僕のように扱われる存在にすぎない。 観阿弥の子、長男の藤若(後の世阿弥)はそんな虐げられた状態でも、芸の道に邁進していた。美少年のため屈強たる僧兵から慰みものにされても弱音を吐かず、父観阿弥による芸の指導にも一心不乱に打ち込んでいる。そんな兄…
散華 紫式部の生涯(上)【電子書籍】[ 杉本苑子 ]価格: 1540 円楽天で詳細を見る 【あらすじ】 世は藤原氏が全盛を極め、平安王朝絵巻が繰り広げられていたころ。藤原為時は下級貴族であったが、詩歌や漢文に長じていた。その次女として生まれた小市(のちの紫式部)は漢文を読み下し、古今和歌集を全て諳んじるなど周囲の大人も驚くような才能を見せる。父は小市が男だったら、と悔やむほど。 一方姉の大市は秀麗な貴公子から美しい恋文を受け取り、女の幸せに浸っていた。そんな姉に対して、小市は自身を人並みの容姿と自覚し、文学で身を立てる気持ちを持ちながらも、素敵な貴公子との出会いを夢見ながら年を重ねていく。20…
知研読書会の第27回目。毎回最後に総括コメントを述べる役目になっている。 「気候変動」「間違い学」「空想教室」「民設民営」「逆ピラミッド」「人物史」の共通項をおおづかみに理解するように聞いた。その結果、本日の読書会のテーマは、「間違い・失敗から学ぶ」と総括してみた。 以下、私のコメント:科学コミュニケーション。成功学より失敗学。面白がる精神。結論から。歴史に人あり。 私は「日本ラグビー史」を飾る二人のレジェンドの著書と、「日本喜劇人史」や「日本映像人史」を書いた二人の人物の著著とその志の高さを紹介した。以下の2枚は紹介した資料。 以下、紹介された本。 ■ジョン・クック著 加納安彦監訳『世界一ク…
木曽義仲の娘であり鎌倉二代将軍頼家の側室であった苅藻と 頼家と苅藻の間に生まれた鞠子。崩れゆく鎌倉将軍家と共に 歴史に翻弄される女性の少し悲しい話。 父のない子ら 唐船 かげろうの女 血染めの雪 散りいそぐ花 竹ノ御所鞠子 (中公文庫 す3-31) [ 杉本 苑子 ]価格:946円(税込、送料無料) (2024/9/31時点) 楽天で購入 にほんブログ村にほんブログ村
食欲の秋?読書の秋?爆睡の秋? ※当ブログではアフィリエイト広告を利用しています 大石静さん脚本の大河ドラマ「光る君へ」を欠かさず観ています。 もう毎回、「動く平安時代」を観ることが出来て、嬉しい限りです。 (役者さんはもちろん、スタッフの皆様、ありがとうございます)。 わたしはドラマを観ながら、「おおっ~」と毎回声を発しています。 たとえば、こんな場面です。 帝や貴族の、立ち上がったり、座ったりするときの無駄のない所作をみて。 高貴な女性たちが歩くときの着物のすそさばき。 高貴な方々は手を人前に出さず、袖口の中に隠していらっしゃるんですね。 中宮はじめ、お仕えする女房たちは、もれなく超ロング…
直木三十五賞(通称・直木賞)の1960年代の受賞作品一覧です。 目次 第43回(1960年上半期) 第44回(1960年下半期) 第45回(1961年上半期) 第46回(1961年下半期) 第47回(1962年上半期) 第48回(1962年下半期) 第49回(1963年上半期) 第50回(1963年下半期) 第51回(1964年上半期) 第52回(1964年下半期) 第53回(1965年上半期) 第54回(1965年下半期) 第55回(1966年上半期) 第56回(1966年下半期) 第57回(1967年上半期) 第58回(1967年下半期) 第59回(1968年上半期) 第60回(1968年…
江戸時代を、まず武断政治から文治政治への流れを描き、その後貨幣経済の浸透による財政破綻と、幕末に至る各改革の様子を、幕府と地方に分けて、取り上げさせていただきました。 武家政権は鎌倉時代から続いていますが、戦国編はともかくとして中世(鎌倉~室町)編と比べても、「血生臭い」話は随分と減りました。社会の矛盾ははらんでいますが、徳川家康が築いた幕府が、先の鎌倉、室町と比べて支配体制が微細に行き届いていたのかと思います。その中での「士農工商」の階級社会はそれなりの矛盾を生み出し、時代小説の格好の舞台ともなりました。 今回は「政策」を主題とした作品が多かったかと思います。その中で取り上げなかった本をいく…
伝え続けねばならぬ歴史(2024年8月18日『産経新聞』-「産経抄」) 第5方面軍司令官として北海道防衛の策を練る樋口季一郎中将(孫の隆一氏提供) 多くの国民は、昭和天皇の玉音放送を聞き終戦を知った。<父母(ちちはは)の泣けば幼き子等までがラヂオの前に声あげて泣く>高見楢吉。昭和20年8月15日の点描である。大本営は翌16日、各方面の軍に戦闘行動の即時停止を命じている。 ▼自衛目的の戦闘についても、18日午後4時を刻限に銃を置くよう通達があった。ソ連軍が千島列島最北端の占守島に上陸を開始したのは、その18日だった。「断乎、反撃に転じ、上陸軍を粉砕せよ」。現地の守備隊に、そう命じたのは第5方面軍…
7月中は姉が入院して、ノンビリ1人暮らしをしていると思われたが、実は会社に行って、食事をして、シャワーを浴びて寝るのが精一杯の生活だった。 世間の主婦は、その上家族の食事まで作っているのだから、ご苦労様としか言いようがない。 甥の嫁さんも手術のため入院というので、チビ娘達の食事の足しにと、ロイホの冷凍グラタンを送った。 チビ娘に冷凍グラタンを送っても、冷凍庫に入れるスペースが有るかとメールを送ったのだが、グラタン食べたいという返事で、質問に答えろよ。と、婆さんは思う。 最近と言うか、常にと言うか、会話はかみ合わない。 わかって、スルーしているのか、バカなのか。 高校生だというのに、困ったものだ…
(8/2)ひとまず100点選書。第一弾の選書なので推薦本には頼らず。蔵書とアマゾンのブックリスト、これまでの読書経験と知識を駆使して、読みたい本を直感で選んだ。 今のところ順番はランダムだ。3500の選書リストが完成するまでには適切な分類法を見つけようと思う。その際、選書やリスト作成におけるルールも付記する(表紙画像は載せない、アマゾンや出版社ページへのリンクは貼らない等)。 (8/3)200点選書。 (8/4)300点選書。 (8/5)400点選書。そろそろ分類しないとね。日本十進分類法を参考にする予定。 (8/9)500点選書。 (8/10)600点選書。 (8/11)700点選書。 (8…
集英社の夏の文庫フェアの小冊子「ナツイチ 2010」で紹介されていた本の一覧。 冊子自体はすでに処分してしまっていて、自分の覚書メモの写しなので抜けなどのミスがあるかもしれません。
編集 6月26日 誕生日の全国35万人の皆さん、おめでとうございます (拙句) 花石榴朱なる人に逢いたけれ 雅舟 【花】 ザクロ 【花言葉】 円熟した優美 【短歌】 雨のみちにザクロは朱く散りいたり詫びたき想いにわかにおこる 不意によみがえつた記憶に、申し訳ない気持ちがあふれました。しっとりぬれた道の上に、散ってなお美しいザクロの花を見つけたせいでしょうか。 【季語】 柘榴(石榴)の花【俳句】 花柘榴煌々たれば欺けず 伊藤 白潮 あかあかと一と夜の旅の花柘榴 石塚 友二 ときとして少女は脱兎花石榴 小原 福雄 【三行詩】 秋は実柘榴の吸い付きたい誘惑 今、花柘榴の朱のあでやかな魅惑 花も実も人…
東京女子医大を創立した吉岡彌生の生誕の地:掛川に立つ記念館と実家の医院跡を5月24日に訪問した。 生涯を「志」「翔」「愛」にわけて展示されている。 座右の銘は「至誠一貫」。そのとおりの不屈の生涯だった。 「大正評判女番付」が展示されていた。記念館では、文壇の酒豪の番付や文豪の執筆量料の番付などを見たことがある。今度は女の番付だ。 横綱は広岡浅子(銀行家)と峰島きよ(質商)。張出横綱は矢島楫子。吉岡弥生(女医)は安井哲子(教育家)と並んで大関となっている。三浦環(音楽家)と川上貞奴(女優)が関脇。下田歌子(校長)と棚橋洵子(校長)が小結。前頭で名前を知っているのは、九條武子(美人)、野上弥生子(…
汚名【電子書籍】[ 杉本苑子 ]価格: 825 円楽天で詳細を見る 【あらすじ】 旗本の堀伊賀守利重は、本多正純との政争に敗れた大久保忠隣の影響で、宇都宮藩奥平家に蟄居の身となる。間もなく本多正純が宇都宮藩に転封になると、奥平家は煽りを食って格下の古河藩に移封と決まった。藩主の祖母の加納御前は、家康と築山殿の間に生まれた長女(亀姫)で、将軍秀忠の姉の立場もあって、本多正純に我慢がならない。そこで本多家を追い落とすために、堀利重は家臣の越ヶ谷謙作を台所の下働き、加納御前は野本清十郎を出入り商人と、それぞれ間諜として宇都宮城に潜り込ませた。 越ヶ谷謙作は城内で下働きをする人々と親しくなるが、彼らは…
1973年6月14日から、74年9月14日まで、「朝日新聞」夕刊に連載された時代小説。中公文庫で上下二冊。背表紙の解説を書き写すと、 「元禄十五年十二月、赤穂浪士の討入りが、上杉家の若武者、春日今之助の運命を変えた・・・・・・。公儀に隠した城の修築、禁裡修復にまつわる黒い霧など、絵図作製の特殊技術を持つ今之助をめぐって起こる権謀術数のかずかず、泰平の世の裏面にひそむ人間諸相を雄大な構想でとらえる」。 下巻は「爛熟した元禄時代の影の世界で暗躍する若き米沢藩士春日今之助と、悪に徹した玄武道印。絵図をたてに、公儀に隠した城の修築をあばき、御所修復の裏を探って、巨万の富を掌中のものにしようとする・・・…