漫画家。江戸風俗研究家、著述業。 1958年11月30日、東京都港区生まれ。A型。江戸時代に生きていた。 血液の免疫系の難病のため、漫画家を引退し「隠居」と称していた。 (松田哲夫による追悼文に記載あり)http://www.chikumashobo.co.jp/top/050803/index.html) 2005年7月22日、下咽頭がんのため死去。
1984年「ビッグコミックオリジナル増刊」 ネタバレします。 「閑中忙あり」Ⅰ [らしゃめん] 明治六年横浜 英語翻訳のバイトをしている医学書生野中は突如、洋妾(らしゃめん)と異人の痴話喧嘩を耳にする。 見ればそれは友人の妹尾であった。 彼を助けるために駆け付ける三人の若者、という四人がこの物語の主人公たちだ。 らしゃめんを間男した、と疑われた妹尾は画学生でらしゃめんに裸体画のモデルを頼んでいたのだった。 異人に堂々話をつけようとしたのは元トノサン本多。 目撃して走ったのが医学生野中。 それを聞いて刀を持ち出した大男が井上である。 らしゃめんはトノサンに恋したらしく四人の下宿先に夜這いをかけて…
1986年1月12日号「サンデー毎日」 あるアニメ作品と同じタイトルでこちらが先行。何か意味があるのだろうか。 ネタバレします。 1873年(明治六年) 親愛なるマーガレット 僕は今、君が「東洋の楽園」と形容した島に居る 明治時代の日本を訪れたシロさん(と呼ばれているホワイト氏)が日本への思いを腹蔵なくぶちまける。 これは面白い! 米だけを食する日本人。おかずは二切れのたくわんのみ。 ドイツ人女性歌手の素晴らしいコロラチュラに爆笑する無教養。品性の無さ。 日本人役者による日本語の「ハムレット」の滑稽さ。 そして空には舞台装置のような薄っぺらな月が浮かんでいる。 日本人はこのままでもよかったのか…
ネタバレします。 「術」 明和の頃、筑波山の道然は弟子・小松を連れて里に下り茶屋に入った。 茶屋の娘があまりに可愛いので小松はちょっかいを出してしまう。 ところが茶屋の娘は小松以上の術の使い手であった。 簪を蛇に変え小松を捕らえてしまう。 師匠の道然は呆れてみみずくとなり去ってしまう。 術を解かれて小松は娘の弟子となる。 つまり小松は仙人になる素質がなかった、ということかな。 めでたい、のか。 「梅殿桜殿」 むかし、越智七郎左衛門という侍が壇ノ浦から逃れてきた平家の女ふたりを匿ったという。 七郎左衛門は独身だったのでふたりを「梅殿桜殿」と呼んでそれは仲良うむつまじく暮らし三年経った。 だが彼に…
1985~86年「小説新潮」1988年「筑摩書房」(ちくま文庫) ネタバレします。 1985年正月東京、とある。 マンションの窓から外を見下ろす若い女性。 「夢。そう夢の話。それは東京で自分の生まれるずっとずっと前の東京で」 と始まる。 「ああ、これは安治の画」 井上安治、風景画家。元治元年、浅草生まれ。明治十一年、十四歳の時小林清親に入門する。 清親は西洋画風の奥行と陰影を持つ今にも泣きだしそうな東京を描いていた。 それに対し弟子の安治はぽっかりと突き抜けた東京を描いた、と杉浦氏はいう。 明治二十二年九月十四日、安治は心不全のため没す。 二十五歳。 杉浦日向子を思わせる若い女性が語り手となり…
ネタバレします。 「吉良供養」上・下 この本の一番の読み物であろう。 あの『忠臣蔵』を吉良上野介側から観た考察マンガ作品である。 まず冒頭に 「大義」が殊更物々しく持ち出される時人が大勢死ぬ。快挙とも義挙ともはた壮挙とも云われる義士の討入はまぎれもない惨事だと思う。ヒナコ と書かれてから始まる。 吉良家見取り図と被災概要一覧が詳細に描き込まれた図が示される。 さらに吉良邸の人数は八十名前後、女はいない。宿直していた侍は平生通りの二十二名とある。 この二十二名は追加であろうから百人以上の男性のみがいたことになる。 元禄十五年(1702年)十二月十五日 寅の上刻、七ツ時(午前四時) 表門隊大石内蔵…
ネタバレします。 「花景色狐巷談」 春。 花見酒で狐に化かされたという話を聞くこと多し。 春先の水が流れ込んで大そうぬかる田の中を着物の裾を高くまくった侍が膝までもぐって右往左往しているのを「はて妙なことがあるものだ」と人々が遠目に観て集まってくる。 あまりにも立派な侍姿なので人々は声をかけきれずにいたがやがて旅の僧が声を出す。 「御武家様。狐に見入られたのではありませぬか。早く真心に返りなさい」と。 侍はきょとんとして「もう少しお許しあれ」と再び歩き出す。見物人はいよいよ狐だと大騒ぎ。 そんな中で人目を忍ぶ逢引をしていたふたりは仰天する。 男は強気だが女は恥ずかしがって身を寄せる。 しばらく…
本作が杉浦日向子デビュー作という。 なんというデビュー作だい。 ネタバレします。 「虚々実々 通言室の梅」 武士なのにも関わらず商家の若旦那という風情で遊郭を訪れた藤森はすぐに太鼓持ちに見破られてしまう。 それをなんとか誤魔化して中に入ったものの武士の知り合いにまたもやすぐ声をかけられ逃げるように去る。 梅ヶ瀬を選んだものの遊女は突然「胸が差し込んで」と部屋を出て行く。 女が向かったのは浪速に修行に行った若旦那のいる部屋だった。 そこで梅ヶ瀬は久しぶりに会った男と抱き合うのだった。 戻ってこない梅ヶ瀬を心配した藤森は通りかかった童女に問う。 やがて戻ってきた梅ヶ瀬に「あんばいはどうだ」と声をか…
1983年「双葉社」(のち「ちくま文庫)) ネタバレします。 「袖もぎ様」 手鏡で外の様子を見ている箱入り娘。 見ているのは店の前をいつも通る若者であった。 冒頭から娘の後ろ姿が描かれる。 紙の結い方、飾りそして襟首の細さ初々しさあどけなさ。 そして若者は娘がいる店の前で鼻緒を切ってしまい倒れ込む。 店で鼻緒を仮修理してもらった若者とその友人たちが出て行った後、娘は突っ伏している。泣いているのだろうか。 「そろそろお支度を」の声に娘はやおら走り出す。 このあたりもほんとに若々しいのだと感じられる。 娘は若者たちに追いつき声をかける。 「あそこは実は”袖もぎ様”なのであなた様のお袖をいただかねば…
ネタバレします。 其の二十五「心中屋」 これがまたなんともおもしろい。 若い娘が血だらけで倒れその側に遺書らしきものが。 母親は泣いてとりすがるが娘は血だらけのままむくりと起き上がり「おっかさん」 昨夜死ぬつもりで歩いていたら通りすがりの男に「一両で心中につきあおう」と言われ払って心中を買ったものの一夜明けたら自分は行き帰り男は消えて血糊だらけとなっていた、という。 善次郎がこのお話をお栄に伝えていると北斎が血だらけで帰ってくる。 鶴屋南北の新作芝居では首は飛び長はまき散らされ舞台からの返り血で真っ赤になるという。 またも若い娘が死のうとしている時これもまた若衆髷の少年が声をかける。 一両で西…
ネタバレします。 其の二十一「愛玩」 天衣無縫な娘の話。 男でも女でもこんなお嬢さんに惹かれてしまうんだろう。 でもそれはほんとに犬猫みたいな可愛さがあるからなのだろう。 そういう風になりたいと思ってもなれるものでもなくその演技をしているのかもしれないけれど。 其の二十二「綿虫」 この作品中、歌川国直が一番良い男として描かれているのではないか。 おおらかでよいなあ。 善次郎もおおらかではある。 善次郎が北斎宅に行くと物凄い煙が。 火事かと慌てると北斎お栄と国直国芳が仲良く焚火をして芋を焼いていた。 国直は芋食いだ。 だが、その焚火は普通の火とは違うという。 昨晩、小石川の辺りで道端にチラチラし…