日本文化の特異性を語る際、避けては通れない「切腹」。だが、私たちはこの凄惨な行為を、どこか「武士道」という美しい物語の枠組みに閉じ込めて理解した気になってはいないだろうか。千葉徳爾による『日本人はなぜ切腹するのか』は、そうした情緒的な解釈を剥ぎ取り、生理学的、歴史的、そして民俗学的な実態から、この奇習の真髄を白日の下に晒す。 本書の特筆すべき点は、切腹を単なる「名誉ある自決」としてではなく、解剖学的な「苦痛のプロセス」として捉え直している点にある。著者は新渡戸稲造の論考を踏まえ、「腹を切ることと死ぬこと」の相関を冷静に分析する。内臓が露出する激痛に耐え、自らの意志を誇示する。それは単なる自殺法…