深夜、店内にひとりの青年が入ってきた。 ドアを開ける音も、歩く足音も、とても静かだった。席に着いた彼は、上着の袖を軽く引いて、目を伏せたままこう言った。 青年ハイボール、薄めで… 私は軽くうなずき、手元で氷を整える。彼はどこか、話すつもりで来たような目をしていた。 青年大学の頃、ずっと同じ講義に出てた子がいたんです。毎回、彼女が教室のドアを開ける音が、妙に印象に残ってて…隣に座ることが多くて… でも、あまり話したことはなかった。1回だけ、ノート貸したときに少し話しただけで…。 ハイボールを差し出すと、彼は礼も言わず、少しだけ飲んだ。 青年正直… 好きだったんです。でも、自分なんかが話しかけても…