『須賀敦子の方へ』 松山巖 著 新潮文庫 自分が須賀敦子という作家を知ったのは、2000年を越えてからだったと思う。1998年に亡くなっているので、ある意味で、間に合わなかった、もしくはすれ違いになった作家である。 本作は、評論家・小説家である松山氏による、須賀敦子の評伝である。没後20年に合わせての文庫版だったようだ。 須賀敦子という作家が『ミラノ 霧の風景』を発表した時点で61歳だったそうなので、かなりの遅咲きと言えるだろう。しかし、発表当時から、かなりの注目を浴びていたようだ。亡くなった後それほど間を置かずに全集が刊行され、そこに付された年譜は200ページに及んだという。 所謂文豪と称さ…