木工、諦めました。 木箱に納まった進物というものに、めったに出逢わなくなった。たまに頂戴すると、身分不相応な高級品をいただいてしまった気持になる。すぐには箱を捨てられない。もったいないというだけでなく、素木の板片に接する機会などめったにないから、なにかに活用できぬかと、つい考えてしまうのだ。 彫刻刀は持っている。十五年以上も前になるが、年賀状用に木版をいたづらしてみようかという気紛れを起したことがあって、買ったものだ。児童の工作用に過ぎないが、いちおうは平刀、丸刀、角刀、尖刀と揃っいる。 蒲鉾の板で、手作りの表札ができぬものかと、考えたりした。生来いたって指先不器用なたちだから、一人前のものが…