かつて「実用書と図書館」(『図書館逍遥』所収)を書き、日常生活に役立つことを目的とする実用書出版社にふれたことがあった。実用書はそうしたコンセプトゆえに、生活と時代の要求に寄り添い、ロングセラーとして版を重ねているものが多いのだが、文芸書や社会科学書と異なり、書評の対象となることは少ない。それは小説や詩に象徴されるように、かつての書物の基本的イメージは無用の用にあることが前提をなっていたからだと思える。 これは近代出版業界の常識で、二十年前に拙稿を記した時代にも当てはまる構図だった。ところが今世紀が進行するについて、そうしたパラダイムは解体され、実用書自体がビジュアル本にしてセレブティビジネス…