暖かくなったのか寒いままなのか、よくわからないまま数週間が過ぎている。日中の陽射しは陽だまりを作るがそれはすぐに北風に蹴散らされてしまう。ただ、確実に春が近づく風景は、確かに在る。梅の花はもう散ってしまい樹は肌寒そうに思える。桜の蕾は少しづつ膨らんでくる。足元にフキノトウをみつけ天婦羅にしたのは数週間前だった。摘み残した花は大きくなり食べられそうになかった。かわりに蕗の茎をもいで、油揚げと共に煮物にした。苦みに満ちた食卓は春だった。 雨の降る一日があった。その中で雨に滲む目に鮮やかな色合いが在った。女子学生の袴姿だった。ビニル傘をさして歩きづらそうに歩いている。そんな時期なのか、と思った。三年…