『告別』宮沢賢治 ーーー この詩は、詩集「春と修羅 第二集」に収録されている詩です。 宮沢賢治が花巻農学校の教師だった頃、音楽の才能を持つ沢里武治という生徒がいました。 沢里は、楽譜を読まずとも、一度聞いた音をオルガンで奏でることができる、いわゆる絶対音感の持ち主だったようで、賢治も彼の才能を高く評価していました。 しかし、当時の農家の息子は家業を捨てることは許されず、沢里も同様、いずれ音楽を辞めなければならない運命でした。 そんな沢里が卒業する年、賢治は農耕自炊で生きる本当の百姓になるために、学校を辞する決意をします。 その退職の折、沢里と学校の生徒、そして自身に向けて書いた詩がこの『告別』…