為朝は紀平治とともに薩摩潟沖の小島より便船に乗り、順風に帆を揚げさせ日あらずして琉球に渡海したり。 主従は日本の商人の身なりで宿に入って、鶴の行方を定めんとしたものの、全くわからずに日送りをしていた。 そんなある日 主従が起き出て見ると、はるばる持って来たりし巻絹、練絹*1などの荷物が忽然と消えている。 「盗賊に違いなし、どこから入りなん」 と疑いつつあちらこちらを確かめてみたところ、ここから入ったのであろうというようなところもなし、あまりにいぶかしければ、宿の主人を呼びて、しかじかの由を告げたところ、その主人が 「これより西南に𦾔虬山(きゅうきゅうざん)という小島があります。 ここは花瓶嶼(…