夕方まで、家で寝転んで本を読んでいた。あと数ページで読み終えるところに来て、少し疲れたから、読んでいたページに指をはさんで、起き上がり、サンダル履いて、本持ったまま外に出た。昼間は暑かったが、この時間には風もあり、涼しかった。 路地の、入ったことのない角を曲がると、通ったことのない川沿いに出た。川に沿って緩やかな曲線をかたどる建物の白い壁一面に、緑の葉がびっしりつたっていた。少しづつ夕闇が迫る町の川べりに立って、しばらくの間、たぶんもう現役ではないその建物を眺めていた。どこかしら自分が物語の中にいるような気になっていった。何羽ものカラスが鳴きながら、近くの空を飛び去っていった。ちらほらと夕暮れ…