イラストレーター。 角田光代「庭の桜、隣の犬」(講談社文庫版)、中島京子「FUTON」(講談社文庫版)、林真理子「白蓮れんれん」(集英社文庫版)などの表紙装画を担当。 早稲田、目白、雑司ヶ谷にて「本」に関係する仕事の集まり「わめぞ」のメンバーでもある。
武藤良子の絵と仕事・・・http://mr1016.hatenablog.com/
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おおかたの露店は、撤収作業に入る。雑司ヶ谷鬼子母神さまご境内での「手づくり市」である。 夜半から早朝へかけて、時おり肌寒さをおぼえるほどの涼風が吹いた。だのにラジオでは、今日もきびしい残暑になると警戒を呼掛けている。ホントかいな、と思った。 陽が高くなるにしたがい、気温も湿度も急上昇し始めた。午前十時には、肌にベトッと来るような湿気をともなう猛残暑となった。濡らしたティッシュペイパーで口と鼻とを塞がれたような、息苦しさすら感じた。 それでも今日ばかりは出掛けてみよう、いやぜひとも出掛けたいとの思いがあった。古書往来座さんの店先で、中古の雑貨小物が展示即売されると聴いていた。おりしも同店からほど…
かすかに秋めいてきたとはいえ、肌に心地よい風が感じられるのは、夜更けてからと早朝のみだ。陽が高いうちの残暑には、あい変らず戦意を喪失する。 本日の洗濯ものの異色第一は暖簾だ。いつ頃のいかなる機会の引出物だったかさっぱり記憶にないが、十代目(ご先代)の桂文治師匠から暖簾を頂戴した。桂一門といえば、家紋は「結び柏」と決っている。 わがパソコンデスクの部屋の入口に、なん十年もさがり続けてきた。かつては父の部屋であり、要介護の身となってからは介護用ベッドを据えて、いわば在宅介護の前線だった部屋だ。その頃から、暖簾はさがっていた。十代目と昵懇だったのはむろん私ではなく父だから、この暖簾は私とともに父の最…
帰り道が遠く感じる展観と近く感じる展観とがある。 お若い友人にしてイラストレーターの武藤良子さんの作画展が、久びさに東京で催されるとのことで、出掛けてみた。恵比寿の小画廊での展観から一年ぶりだ。モチーフは椿の花に一貫しているから、催しも不動の「百椿図展」だ。 室生犀星記念館のグッズデザインを担当なさったこともあってか、もともと金沢とはご縁の深かった武藤さんだが、この一年は東北地方の数都市を皮切りに、岐阜多治見、岡山倉敷、沖縄などで展覧会が催された。いずれも書店もしくは古書店が会場となっていたり、骨折り役となっていたりしたところを視ると、なにかそういった、心ある小書店さんがたの横情報網(シンジケ…
節約を尽しながらもぜいたくな旅。気ままな遠出なんぞは、これが最後かもしれない。そうだ倉敷へ行ってみようと思い立ち、愉しみに計画したのだった。 食糧買出し以外には、極力外出しない方針だ。用件ひとつを足すために池袋まで出掛けたりはしない。百貨店でお使いもの調達と、ロフトで文房具と、本屋・古書店での探しもの、三つ以上の用件が溜ったら、一気に片づけるべく鉄道に乗る。旅も同様だ。ありし日のように、ふと思い立ってふらりとなんて、今の私にはぜいたく過ぎる。 武藤良子さんの全国巡回「百椿図」展が倉敷で開催されている。昨年、東京恵比寿での皮切り展示は拝見した。東北地方や岐阜県を回っているときには、出掛けられなか…
ほろ酔い、巡回個展。 イラストレーター武藤良子さんの巡回個展が、今は岐阜市で開催されているらしい。二月二十六日まで。 古書往来座さんを介して武藤さんから、宮城の酒「一ノ蔵 大和伝」をいただいた。私に一杯ご馳走くださろうがためではなく、酒瓶のラベルの画とデザインを武藤さんが担当なさったので、記念に一本という趣旨だ。 一ノ蔵といえばかつて、ほかより大きなラベルに「無鑑査」と墨痕鮮やかに書かれた一升瓶が、ひときわ眼を惹いたものだ。飲み盛りの年頃には、ありがたい想いがしきりと湧いた銘柄のひとつだった。 宮城県の蔵元さんと武藤さんとのあいだに、どういういきさつがあったのかは知らない。以前のお仕事で、椿油…
武藤良子個展(ギャラリーまぁる、渋谷区恵比寿4丁目)7月17日まで。 武藤良子さんは、当ブログ立上げのさいにお世話くださったかただ。人びともすなるブログなるもの、われもいたしみむとて、興味が湧いたものの、どうしたらよいか途方に暮れていた私に、「はてな」が使いやすいでしょうとご指導くださり、設定いっさいを助けてくださった。今回はご本職の画のお仕事。「百椿図」と題して、椿の画ばかりを集めた個展である。なぜ椿か、というような噺は、ご本人によるご案内に譲るとして。 私としては、久びさの遠出外出。しかも所が恵比寿となれば、何十年ぶりかである。街の様相は一変しているにちがいない。裏通りに戸口を開いたこぢん…