プランターにようやく根付いたホトトギスが、ひとしきり花を咲かせたあと、ひとつ、またひとつと萎れてゆきます。まだ青みを残す葉のあいだから、白紫の斑点の花がのぞくさまは、茶花に似合う控えめな美しさでした。今週からの急な冷え込みに、花も驚いたのでしょう。秋の深まりは、これまで当然のようにあったものの「不在」によって気づかされます。そして、ものの不在をもっとも巧みに詠んだ歌人が、藤原定家でした。 駒とめて袖うちはらふ陰もなし 佐野のわたりの雪の夕暮れこの歌では、まず馬をとめて袖につもった雪を振り払う姿が描かれます。大雪のなかを行く旅人の姿を思い浮かべたところに、「陰もなし」と続きます。そこには、雪に覆…