1962年の暮,全世界は驚きと感動で,この小説に目をみはった.当時作者は中学校の田舎教師であったが,その文学的完成度はもちろん,ソ連社会の現実をも深く認識させるものであったからである.スターリン暗黒時代の悲惨きわまる強制収容所の一日を初めてリアルに,しかも時には温もりをこめて描き,酷寒(マローズ)に閉ざされていたソヴェト文学界にロシア文学の伝統をよみがえらせた芸術作品――. スターリン時代の粛清による強制労働の従事者は,1,500万人に達するという.1944年から45年にかけて,友人と交わした書簡の中で,アレクサンドル・ソルジェニーツィン(Aleksandr Isaevich Solzheni…