「死刑のための殺人」(読売新聞水戸支局取材班著、新潮文庫)は取材不足なので、タイトルの問に答えを出すのは容易ではありません。金川は事件当時24才なので教育に問題があったことは間違いなく、とりわけ、家庭教育に原因があるとの上記の本の指摘は正しいでしょう。しかし、そこまで分かっていながら、家庭への取材が不十分すぎます。 本では、取材による事実の発掘よりも、著者の思考が記述の多くを占めています。ろくに取材していないくせに著者の考えを並べるのはジャーナリストとして不適切だと思いますが、なにより腹立たしいのは、その著者の人間観が貧弱で、犯人の思考の本質を全く捉えられていないことです。こんな著者の思考なら…