非常 川端康成 ———「お前との約束はあったかもしれないが、この女はおれのものになっている。」 「いや、この女を愛する愛し方を知っているのはおれ一人だ。」 しかしみち子は、その男をかばい、眉(まゆ)をそびやかして高らかに私を笑う。 「非常」(昭和13年12月) のここの文章は、おなじ川端康成の「母の初恋」(昭和15年1月) を思い起こさせます。 「非常」も「母の初恋」も【ちよもの】と呼ばれる川端康成の作品群のひとつです。 【ちよもの】の特徴に、「小説のどこかが、他の【ちよもの】と微妙にリンクしている」という点があります。 「母の初恋」は大好きな小説のひとつです。 「非常」は、「母の初恋」の姉妹…