水防工法(すいぼうこうほう)とは、洪水の際に堤防から水が溢れ出る(越水)、水の流れで削られる(洗掘)、亀裂、崩壊、堤防もしくは地面からの水漏れ(漏水)などの被害が発生した時に、被害の拡大を防ぐ目的で行われ、応急処置作業・工事を水防工法と言う。
元々水防工法は、川辺に住居を構える住民が生命・財産・農地・作物を守る為に行って来たものである為、農家が日常的に使用する工具・材料が使用されるのが、この工法の特徴である。
特に水防に使用されるのは、竹・立木・丸太・俵・土(砂)・ムシロ・縄等を使って行える様になっています。なお現在では、縄の代わりにロープを使い、ムシロの代わりに防水シート・ブルーシート、俵の代わりに合成繊維の土のうが使われています。
現在でも古くからの工法が受け継がれており、『時代遅れ』と批判される一方、その高い防御性・水防性によって今でも国土交通省をはじめ、幅広く採用されています。
※ここでは、水防工法の代表例を紹介する。地域によっては名称・用途が違うが、当キーワードでは埼玉県を流れる荒川下流域で行われる水防工法名・用途を紹介する。
堤防から水が越水し氾濫を防ぐ目的で作られる。堤防のはじめから0.5〜1m程離した地点に、土のうの口が下流に向く様に積み並べる。継ぎ目には土を入れたり、2段構えにしてより強固な工法が登場している。
堤防が洪水流によって洗掘の被害が発生した時に使用される。よく枝葉の茂った樹木(主にカシなどの木が使われる。)に重し土のうを付け、流されない様にロープ等で固定し、洗掘部分の上流に設置します。一番古い工法であるが、効果が高い工法の一つである。
堤防が洪水流によって洗掘・漏水の被害が発生した時に使用される。防水シートに竹・重し土のうを設置し、洗掘・漏水している部分にかぶせ、被害拡大を防止する。
堤防やその周りで亀裂が発生した時に使用される。亀裂をはさんで竹を出来るだけ深く刺し込み、その竹を時計回りに束ねて重し土のうを乗せて完成。竹の弾性によって亀裂の拡大を防ぎ、堤防の崩落を防ぐ事が出来る。
堤防の天端(堤防の頂上)に亀裂が発生した時に使用される。堤防の両端に竹を刺し、折り重なる様に竹を寝かせ、重し土のうを設置したら完成。効果は上記の『五徳縫い工法』を参考。
堤防の法面(のりめん:斜面の部分)から漏水が発生した時に使用される。漏水箇所を囲む様に土のうを漏水が弱まる高さまで積み上げる。月の輪の頂上部分にビニールパイプを通し緩やかに排水する。これによって、堤防内の水圧が弱まり堤防決壊を防ぐ。半円形の土のう積みの形から月の輪と言う名称になっています。
上記の『月の輪工法』と同じ用途であるが、漏水箇所が堤防から離れた部分で発生した場合に使用される工法である。平成13年に埼玉県加須市で発生した漏水災害で、この釜段工法が使用され1000体近い土のうを作り、被害低減に成功しました。
昭和61年の台風10号による出水の際における懸命な水防活動を契機として、水防活動が極めて重要であることが再認識されたため、昭和62年度から毎年出水期前の5月(北海道は6月)を水防月間とし、水防の重要性を国民に周知すること等を目的として各種の行事を実施しているものです。