〈古文🪷〉 「少納言の乳母と言ふ人あべし。尋ねて、詳しう語らへ」 などのたまひ知らす。 「さも、かからぬ隈なき御心かな。 さばかりいはけなげなりしけはひを」 と、まほならねども、見しほどを思ひやるもをかし。 わざと、かう御文あるを、僧都もかしこまり聞こえたまふ。 少納言に消息して会ひたり。 詳しく、思しのたまふさま、おほかたの御ありさまなど語る。 言葉多かる人にて、つきづきしう言ひ続くれど、 「いとわりなき御ほどを、いかに思すにか」 と、ゆゆしうなむ、誰も誰も思しける。 御文にも、いとねむごろに書いたまひて、 例の、中に、 「かの御放ち書きなむ、なほ見たまへまほしき」とて、 「あさか山浅くも人…