江戸深川の棟割長屋。浪人海野又十郎は今日も頼みの毛利三左衛門に仕官の途を求めるが、いい返事をもらえない。一方、壁隣に住む髪結新三は商売道具を質に入れようと白子屋を訪れるが、こけにされたことから、白子屋の娘お駒を誘拐してしまう…。 シナリオライターを経て、昭和7年に監督デビューした山中貞雄のP.C.L 入社第一回作品。1 カットの為に約36mの長さの石垣を作り、ステージをブッ通す棟割長屋のセットを組むなど、リアルな映像にこだわった。山中貞雄は、わずか5年半の間に26本の時代劇映画を作り、そのすべてが評判を呼んだが、本作の完成直後に日中戦争に召集され、中国にて戦病死。本作が遺作となった。 (早稲田…