韋駄天弥ン八:棟田博 1950年(昭25)4月および6月、雑誌「富士」掲載。 1956年(昭31)東方社刊。 棟田博(1909~1988)は今ではほとんど忘れ去られた作家の一人と思われる。戦中期に従軍中の体験を書いた「兵隊もの」の作品で人気を得て、除隊後は従軍作家となった。戦後しばらく休筆していたが、出生地岡山県津山(美作)の小さな城下町を舞台に、明治末期の人力車夫たちの生きざまと変転を描いたのが表題作である。 韋駄天弥ン八:棟田博、田代光・画 弥ン八こと溝呂木弥八とその親友幸助とのコンビが、商売仇の俥屋との対抗戦に闘志を燃やす喧嘩と恋のユーモア・ペーソス篇と簡単に言えば終わってしまうが、作者…