10年ほど前、私の主催する理論物理の研究室に得度もしているお寺の子弟の院生がいた。彼は、すでに法事では檀家回りを手伝っている一人前の僧侶でそのうち浄土真宗のお寺を継ぐことなっている、とのことだった。お浄土は西国にあるというから彼の名前を仮にWest(西)君、略してN君としよう。 あるとき、N君を囲んで浄土真宗、親鸞、法然、蓮如、浄土宗をめぐる話に花が咲いたときがあった。と言っても、もちろん、日頃のこちらの疑問や一知半解で知っていることを彼に尋ねる、というのが主なことの成り行きであった。私は最初に職を得た大学が宗派関係の大学なので、少し興味を持って仏教や浄土真宗、親鸞について少し勉強したことがあ…