1929年(昭4)改造社、日本探偵小説全集 第16巻所収。 浜尾四郎の作家としての活動は6年間しかなかったが、その最初期の3作品を読んだ。 『悪魔の弟子』 片や裁判所の判事、片や殺人犯。獄中から少年期に兄のように慕っていた判事に宛てた長文の手紙のスタイルを取っている。少年時代には上級生や従兄などから事物への興味の方向性や価値観が影響を受けることは確かにある。ただし一般的には成長の過程で、どこかに社会的な規範や尺度とのすり合わせが行われる。この囚人の場合には異常なほど純粋過ぎたのか。「あんたのせいでこうなった」と難詰しても、その責任を転嫁する訳にはいかない。さらに「不眠症」や「催眠薬」への過度の…