1901年(明34)三新堂刊。前後2巻。作者の菱花生(りょうかせい)については生没年も不明、明治後期から大正にかけて探偵実話や悲劇小説を書いている。これにも探偵実話の副題をつけていて犯罪実録を小説風に書き記したもの。地の文は明治期そのものの漢文調で区切りがなく、格調はあるが慣れるまではやや読みにくい。会話部分は口語体で講談調。 板橋街道の鶴屋の小町娘と評判のお留は、虫も殺さぬような顔をしながら祖父母に甘やかされて育ったため、陰で男たちを色仕掛けで操りながら勝手気ままな人生を送っている。殺人放火やら、造幣局印刷所からの盗難、金貸し婆の失踪などの事件が次々に起きるが、警察の捜査関係者の動きは断片的…