遺体を長期保全する方法として、エンバーミングという技術があるらしい。消毒や殺菌を行い臓器を取り除き、血液を排出するとともに防腐剤を注入する。命が終わって徐々に腐敗していく肉体を生前のような姿にとどめておくための処置だ。 日本は国土の狭さから火葬までの期間が短いためあまり普及していないらしいが、爺さんの火葬までは一週間。加えてこの猛暑である。腐敗は全ての有機物に平等に訪れる。冷蔵庫の中の肉ですら一週間もつか怪しい8月に、冷房とドライアイスで腐敗に抗えるほど人は生き物をやめてはいない。頬がこけ、唇は紫色になり、ひどく冷たくなった爺さんを僕は送り出した。 帰ってきた爺さんをみて、真っ先にもったのは違…